令和二年度春から本格稼働する袋井市の「幼小中一貫教育」。
幼小中一貫教育の実施に至った背景と、袋井市の教育がめざす子ども像について説明します。
幼小中一貫教育実施の背景
少子高齢化や核家族化の進行、情報化やグローバル化の進展など、社会環境の急激な変化などによって、学校教育には様々な課題が生じています。
袋井市では、児童生徒の学習意欲の低下や、学習のつまずきなどを抱えたままでの進級・進学、さらには不登校などが課題となっています。
袋井市の学校教育の現状
1.学力の低下(平成29年度全国学力・学習状況調査より)
- 全国平均と比べて全体的に低い
(全国平均正答率との差 小6…▲3.0%、中3…▲2.2%) - 成績下位の割合が高く、二極化が見られる
2.自己有用感の低下(平成29年度全国学力・学習状況調査より)
- 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合
(袋井市…小66%、中37% 全国…小70%、中45%) - 自分にはよいところがあると思っている児童生徒の割合
(袋井市…小32%、中30% 全国…小39%、中28%)
3.問題行動・不登校の増加(平成28年度調査より)
- 小・中学校では近年、問題行動が増加傾向にある
- 不登校の子どもも、特に中学校において増加している
(袋井市…小0.49%、中4.77% 全国…小0.48%、中3.01%)
「小1プロブレム」とは、小学校に入学したばかりの1年生が、①集団行動がとれない、②授業中に座っていられない、③先生の話を聞かないなど、学校生活になじめない状態が続くことをいいます。
また、中学校に進学すると、①授業形態、②指導方法、③評価方法、④生徒指導の手法、⑤部活動の有無など、小学校とは違った生活になります。
先輩後輩といった人間関係が発生するのも中学校からです。
こうした生活の変化についていけず、不登校になってしまったり、学習に支障が出るなどの問題を抱える生徒が出てくることを「中1ギャップ」と呼んでいます。
環境が変わったことによる「つまずき」や「とまどい」を減らすためには、幼・小間、小・中間の連携を密にし、児童生徒の情報を共有したり、事前に生活の変化に慣れる工夫をするなどの対策が必要です。
これから求められる資質・能力
またこれからの時代は、AI(人工知能)をはじめとする技術革新が進展し、急激に社会・産業構造が変化し、将来が展望しにくい時代だと言われています。
来るべき新しい時代を生き抜くためには、幅広い知識と柔軟な思考力に基づいて、変化にたじろぐことなく、自立した人間として主体的に判断し、多様な人々と協働しながら新たな価値を創造するための力が必要です。
12年間の教育プログラム「幼小中一貫教育」
このような背景から、現在学校が抱えている課題を解決するとともに、これからの時代に対応できる子どもを育てるため、幼児教育(3~5歳)、小学校教育(6歳~11歳)、中学校教育(12歳~14歳)をひとつの教育期間として考え、継続的に子どもを育てていくための仕組みが、「幼小中一貫教育」です。
「夢を抱き、たくましく次の一歩を踏み出す15歳」の育成
袋井市では、幼小中一貫教育の実施にあたり、目的を「夢を抱き、たくましく次の一歩を踏み出す15歳」の育成としました。
その実現には、「自立力」と「社会力」を身につけることが重要と考えています。
「自立力」と「社会力」とは
「自立力」とは、自分で考え、自信と責任をもって主体的に行動する力のことで、たとえば…
- 学びに向かう意欲と力がある
- 確かな知識や技能を身につけている
- 自分で課題を発見し、解決する力がある
- 豊かな感性がある
- 粘り強くがんばりぬく力がある
- 失敗しても立ち直る力がある
- 健康な心と体を持っている
- 自分のキャリア形成に具体的な考えを持っている
などがあげられます。
また、「社会力」は、集団の中で他者の存在を認め、話し合い、学び合い、協働する力のことで、たとえば…
- 高い言語能力がある
- 親和的なコミュニケーション力がある
- 豊かな表現力をもっている
- 高い規範意識をもっている
- 多様な考えを尊重する寛容さをもっている
- 他者と協働する力がある
- 他者に共感する感性をもっている
- 社会に貢献したい気持ちをもっている
などがあげられます。
こうした力を養うことで、
- 学力の向上や不登校の減少
- 社会生活で必要となる資質・能力(考える力)の育成
- 家庭、地域、学校、行政が一体となった「オール袋井」による子育て体制の充実
をめざします。
鈴木典夫教育長
子どもたちを取り巻く環境は、めまぐるしく変化し、近い未来に社会人になる子どもたちには、定番のゴールを示してあげることはできません。できるのは、時代の向かうであろう大体の方向を示し、良いスタートを切らせてあげることだと思います。ゴールは、そこから自分で選ぶのです。どんなに時代が変わろうと、子どもたちには変化を楽しみ、たくましく生きてほしい。幼小中一貫教育を通じて、一人で生きる力「自立力」とみんなで生きる力「社会力」をバランスよく身に付け、主体性を備えた15歳に育ってほしいと思っています。
義務教育の出口である15歳までの成長を中学校の教員だけでなく、小学校、幼稚園の教員も見守り、家庭や地域、行政も一体となって子どもたちの成長を支えていきます。
袋井市ホームページ「幼小中つながる通信」もご覧ください
袋井市のホームページで「幼小中一貫教育」についての取り組みなどを紹介しています。ぜひご覧ください。